【インスピレーション】 清水 洋子
今振り返って、私にとり、子供時代の読書とは何だったのでしょう。
何よりもそれは私に楽しみを与えてくれました。
そして、その後にくる、青年期の
読書のための基礎を作ってくれました。
それは、ある時には私に根っこを与え、
ある時には翼をくれました。この根っこと翼は
私が外に、内に、橋をかけ、自分の世界を少しずつ広げて育って いく時に大きな助けとなってくれました。
読書は私に、悲しみや喜びにつき、思い巡らす機会を与えてくれ ました。
私が自分以外の人がどれほどに深くものを感じ、どれだけ多く
傷ついているかを気づかされたのは、本を読むことによってでした。
悲しみの多いこの世を子供が生き続けるためには悲しみに耐える心が 養われると共に、喜びを敏感に感じ取る心、喜びに向かって伸びよう とする心が養われることが大切だと思います。
第26回 IBBY ニューデリー大会
美智子皇后陛下の基調講演より抜粋
(International Board on Books for Young people)
プログラム『 朗 読 』
「絵本とは」・・・豊かな絵と必要最低限の言葉が想像を膨らませ、心の隙間を埋めてくれるところにある。
この20年余り絵本の読み聞かせ活動を通し、気づいたことをお話しさせていただきます。
ひとつは絵本作家や画家から聞いた話です。
作者は、ふっとひらめいた物語の喜びや悲しみ、ある時は伝説等をどのように文面で人々に伝えるかを考え、一気に書き上げる物語もあれば、その文章に出てくる人物や場所、季節の状況などを正確に書こうとして、何年もかける場合もあるとのことでした。
また画家も、その文章を読み手に理解してもらえるよう、文章では表しきれないところまで絵にする為に、やはり何年もかかって描き上げる作品もあるというのです。
ですから一冊一冊の中味には、作者や画家が真剣に向き合った魂が入っているように思います。
これらを表すものとして、子供たちが大人では気づかないような細かい絵の表現まで見抜く力があること、また三ヶ月の赤ちゃんが、じーっと絵を見つめ、繰り返し繰り返しの「いない・いない・ばあ」の読み手の声で笑いだす。
このような感動の場面にどれほど出会ったかしれません。幼児にとって絵本は、与えるものではなく読んであげるものだと知りました。
高校生は・・・
真剣に絵を見て私たちの声に反応し、小さい時読んでもらったことを思い出した と言います。
大人の方は・・・
昔ばあちゃんから聞いた桃太郎の話を今でも、その時の場の状況と共に思い出せると語ってくださいます。
このように、語ってくれた事・読んでくれた事が長年の間、聞き手の心をどれほど豊かなものにしているか計り知れません。
ある本では主人公と一緒になって空を飛び、ある本では海のしぶきをうけたり
日常ではとうていありえないような数々の場面に遭遇し、絵そのものを自由に動かしながら、耳で聞いて想像していられるのです。音楽だって聞こえてくる雰囲気にさせるのが絵本なのです。
絵本には、赤ちゃんから大人までをとりこにしてしまう不思議な力があるのです。
どうぞ皆さまも絵本を読み合って、より豊かな毎日をお過ごしください。
プログラムリーダー 加藤 和子
大人になると接することが少ない絵本ですが、今回の『朗読』を通じて、
改めて絵本の良さ、読み聞かせの大切さを教えていただきました。
あまり遠出ができない今だからこそ、懐かしい絵本などを手に取り、絵本の中の世界に
行ってみるのも良いかもしれませんね。
朗読をしてくださった洞口さん、内田さん、森下さん、
ウェブサイト委員会